番外編.2CADユーザーが3Dアーキデザイナーを使ってみたら
一級建築士事務所ケイミナミアーキテクツ
一級建築士
南 啓史 氏
住宅(新築・リノベーション)/オフィス/展示会の設計監理、大学/専門学校の講師も務める南さん。
実務では図面作成にCADを使用しているが、検討やデザインは手描きで進めることが多いそう。
そんな南さんに、以前から「使ってみたい」とおっしゃっていただいていた3Dアーキデザイナーをご試用いただきました。
■3Dアーキデザイナーで矩形を描いたら壁床ができてしまう。簡単にできて、逆に罪悪感さえ覚えました
南さんが目指す建築についてお聞かせください。
- 南さん
僕は、バザールでござーるや10本アニメ(ピタゴラスイッチ)の佐藤雅彦さんが憧れで、「あの人になりたい」と今も思っています。
この人が建築を考えたらどうなるだろうと思いながら考えることもあるくらいで、どこにでもあるものを、単純なことで、ちょっとした操作で、おもしろいものができる、そういうのがいいと思っています。
住宅はクセのないものがいいと自社のHPでも謳っているのですが、それはそういうところです。
南さんはCADやパースソフトは何かお使いですか?
- 南さん
今はVectorworksが使いやすいなと思って使っています。AutoCADを使っていたこともありますし、最初に勤めた会社ではDRA-CADを使っていて、当時はワイヤーフレームみたいな3Dイメージが作れました。
CADって案外高額なので、あれこれ試せないんですよね。
■こんなに簡単に建物が建つのか!!くらいな感じで(笑)
そんな南さんが3Dアーキデザイナーをお使いになってみていかがでしたか?
- 南さん
-
何とはなしに使ってみたら意外と簡単にできて、逆に罪悪感さえ覚えました。ええのか、これで?と。(笑)
というのも実は、3DCGを見た依頼主が何に感動しているのかがわからないなと思うところがあって、これまで3DCGを使ってきませんでした。空間のデザインにすごいなって言っているのか、フォトリアルな絵にすごいなと言っているのかがわからないから。 CGはあくまでもイメージで”こんな感じになります”なのに、”これができる”と思われるのもよくないと思っていて、タイルの柄が少し違ったり、天然石の色味がちがったり、パースのテクスチャと実物が違うという指摘も怖いんです。
ですが、3Dアーキデザイナーは単にパースを描くのではなく、僕が今手描きでしていることを置き換えることができるのかなと思いました。
実製品のクロスやタイルや建具が入っているので、(お客様に説明するときに)実物のサンプルを手元に置いて「(CG上の)これがこのサンプル」と示せれば懸念していたリアルと違うという点は軽減できそうです。3Dアーキデザイナーは、作業性の良さという点では、矩形を描けば壁・床・天井が出来上がっているので、カンタンすぎて逆にこれでいいのか不安になるほどでした。
レンダリングのスピードも速いと思いました。マンションの広告やCG映画などで見るフォトリアルほどではなかったけれど、僕はホワイトモデルができればいいくらいに思っているのでじゅうぶんです。
逆にスピードが速いし、家具なども位置を変えたらすぐ反映されるしそれはいいなと思いました。3Dアーキデザイナーで作成した住宅のデータを
通常表示、ワイヤーフレーム、ホワイトモデル+輪郭強調でそれぞれ表示
プロユーザーの中にはエスキスの道具として使っている方もいらっしゃるんです。
3案くらい作ってみて、方向性が固まったらパースにして確認してみて、それをホワイトモデルでプリントアウトして、色鉛筆で色付けをしているそうです。
- 南さん
僕はそっち派かなと思います。
一番は図面化されるってところが面白いなと思いました、逆算なんですよね。
ふつうは図面を作ってからパースを描くんですけど、感覚的に壁が立ち上がって、そこから図面ができるっていう、これが大きいと僕は思いました。
BIMっぽいってよく言われます。
斜線検討ができますし、屋根の形状や見えがかりもわかるので、そういうのをザクザクっと確認できるのが、実は一番便利なんじゃないかと思っています。
3Dアーキデザイナーの斜線チェック機能。
グリーンのゼリーからはみ出した部分が斜線規制に抵触している部分
また、手描きやCADだと、図面を描いて、オブジェクト化して、表現して、修正して、また図面に戻らないといけないけれど、3Dアーキデザイナーなら、最初からオブジェクトで検討してラフスケッチの段階で見てもらって、おおまかな方向性を決めてから図面を描けば、図面と完成イメージの行ったり来たりは減らせるのではないかなと思います。
- 南さん
ホントそうだと思いました。現場に行くとやっぱり図面なので、それ(図面化できること)は大きいな。
僕は今、Vectorworksを使っていますが、3DアーキデザイナーはDWGに変換できるということなので、それはかなり時短になるだろうなと思いました。
BIMより感覚的にできる感じがいいし、行ったり来たりが減るなと思います。
■間取りのセカンドオピニオン構想?3Dマイホームデザイナーのデータを施主が持ってきたら、建築士はどう思うのか
ご評価ありがとうございます。
話は変わりますが、弊社には家庭版の3Dマイホームデザイナーという製品があって、施主の方がこのソフトを使ってこれから建てる自分の家をあれこれ考えていらっしゃるんです。
素人である施主が「こういう家を作りたい」って3Dマイホームデザイナーのデータや間取りを持ってきたらどう思われますか?
- 南さん
-
3Dマイホームデザイナーで考えることも、そのデータを持ち込むこともいいんですけれども、そのとおりにはならないかもしれません、とは言います。
ひとつは法規的な構造や設備の規制があるからです。
もうひとつはこだわりを持って考えているとは思うのですが、適当にしている箇所もあると思うんですね。
だから、持ってこられた図面から思いをくみ取ろうと努力はしますし、ヒヤリングのポイントにもしますが、そのまま作るということはしないでしょうね。
逆に全部鵜呑みにしたらまずいと思います。
では、南さんが考えるに、そういう場合に施主はどんな反応の人になら任せていいと思いますか?
- 南さん
-
逐一「ここのところはこう描いてあるけどOKですか?」って聞いてくれる人、間取図をもとにコミュニケーションを取ってくれる人じゃないでしょうか。
例えば、凸な部屋があったとして、ここはフラットでも収まるかもしれないですよね。おそらくその方が素直だし安く仕上がる。そういうことを言ってくれるかどうかではないでしょうか。同じ広さなら右の間取の方が安く仕上がる。
そういう提案をしてくれる人に任せるのが良い、そうだ。3Dマイホームデザイナーって、なんだかできてしまうじゃないですか。そこが面白いところではあるんですが、どこかに無理ができてしまっていることがあると思います。そういうところを見つけてアドバイスをする、施主の方の設計を”これなら建てて大丈夫”というところまで調整してあげる。僕らの職能としてそういうものがあってもいいかもしれません。
設計事務所で全部設計してもらうと数百万かかるけれど、プロの第三者機関がそれ以下の費用でお手伝いする、いわばセカンドオピニオンのような役割ですね。でも、こだわりのある方はぜひ設計事務所にご依頼ください。(笑)
施主の中には聞きたいことがあるのに聞く人が見当たらないとか、こだわるなら設計事務所に頼まないといけないのかと怖がる人もいるような気がしています。
家づくりは、ほとんどの方が経験のないまま、いきなり大きな仕事をしないといけない。しかも失敗できない。家づくりはハードルが高すぎるんです。
僕らは設計の仕事をしているので図面から完成形が見えますが、普通の方は間取図を見てもわからない人がほとんどで、そんな人が工務店さんに指示なんてできないです。ネットにはたくさん情報がありますが、それゆえにネットではわからないこともたくさんあるので、(第三者機関の)需要はありそうですよね。
それはいいですね!この件についてはまたご相談させてください。(笑)
本日は貴重なお話をありがとうございました。
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