日本語研究の第一線でご活躍の方がMIFESを使ってくださっているというのでお伺いした。お邪魔したのは、日本大学文理学部にある荻野綱男さんの研究室。荻野さんがどこに行くにも持ち歩いているというシルバーのノートパソコンは、朝電源を入れると夜まで電源は入ったままで、MIFESもその間ずっと起動したままだという。
ATOKの監修委員もされている荻野さんのご専門は日本語の敬語や方言。
「新しいことやんなくちゃね」と日本語の調査にWWWを使う方法も研究されている
まずは日本語の研究というお仕事について聞いてみることにした。
「最近はコロケーション辞書を作成しています。そこでWebを使っているんですが、ひとつ問題があることに気付きまして…」
コロケーションとは、文中の単語のつながり方のこと。
例えば、「立つ」という単語。人や生き物、柱などの単語とつながって使われることが多いが「茶柱が立つ」「波が立つ」といった使われ方もする。このような単語と単語のつながり方を記述した辞書がコロケーション辞書である。
辞書に載せる/載せないは、日常的に使われているかどうかで決めるのだが、荻野さんはそれを調べるためにWebで検索する方法をとっている。先の例でいうと「が立つ」のヒット数と「人が立つ」などの用例のヒット数との比率で見極められるそう。
そこで気づいた「問題」というのが「誤用の多さ」で、誤用チェックのひと手間がどうしても必要なのだとか。
Webには思っていた以上に誤用が多いそう。 「例えば、 |
しかし一方で、誤用ではあるが一般に広まり日常的になっている例も発見できる。「肯定の前につく『ぜんぜん』はまさに境界線上にある言葉かもしれません」辞書に載せるにはその線引きも難しそう。
また、ヒット数が多くても差別語や放送禁止用語などの掲載はNGと考えるので、ますます単純作業では行えない。
1つの用例を辞書に追加するのに要する労力は並大抵のものではないことがわかり、「辞書を作るのは大変だ」と実感しているそうだ。
アンケートの集計結果(一部)
「日本語の研究」だが、その作業や結果の内容は意外と数学的。箱型編集や罫線機能を利用するのはもちろん、合計もご自身で作成したマクロで求めるそうだ。
「OGINO」という値は荻野さんのオリジナル係数。
ずっと「国語」がお好きだったのだろうか?
「高校までは国語の成績が一番悪かったですね。大学2年のときにたまたま受講した言語学の授業が新鮮で、言葉の面白さに目覚め、言語学科を専攻しました」
その後、方言や敬語の調査に参加して、日本語研究の道へ進むことになっていったのだそうだ。
その頃の調査方法は人に尋ねてデータを集めるフィールドワークという方法。もちろんWebは存在していない頃だ。
「ひたすら地方を回ってアンケートや面接調査をしました。時間も手間もかかって大変でしたけど、そうすることで徐々に自分の知らないことを突き詰めていくことの面白さに目覚め、その結果、研究とはどういうことかを知ったように思います」
現在も荻野さんはアンケート調査を毎年行うそうだ。ゼミの研究生たちにアンケート調査の方法を伝授する目的も兼ねているという。
その作業を見せていただいくと、「データもプログラムもテキストファイル、出力結果もテキストファイルなので、MIFESが活躍しています」と事前調査にご記入いただいたとおりすべてがテキストデータだった。
私もアンケート原稿やレポートの下書きはMIFESで作成するが、アンケート結果は表計算ソフトで管理している。
荻野さんのアンケートもデータを表計算ソフトで入力したら、そのまま集計ができるはず。すべてをテキストデータにされているのはなぜだろう。
MIFES授業のカリキュラム(抜粋)
計8回に及ぶ授業では、マクロの説明をたっぷりされている。 置換のパターンやマクロでの処理手順を考えることで、言語の規則性を客観的に把握できるのだそうだ。
うかがってみると荻野さんは、アンケートに関わるデータだけでなく、プライベートの住所録やメールデータなど、すべての資料をテキストファイルで残しているという。
「20数年前にワープロソフトで作成したデータで読めなくなった資料があるんですよ」
OSやワープロソフトのバージョンアップで開くことすらできなくなった経験がおありなのだそうだ。それ以来、プリントイメージが必要な時はワープロソフトでレイアウトするが、あくまでも基本はテキストデータと決めている。
「テキストデータが読めなくなることはまず考えられない。今まで30年使えたものは、これからの30年も使えるはずです」と荻野さんはいう。
「だから学生たちにも『テキストデータで残しなさい』と言うんです。そしてそのためにはテキストエディタが一番大事だと。エディタは我々の指に一番近いものですからね。」
MIFESの授業をしたこともあるそうで、そのカリキュラムを拝見するとインストールからマクロ作成まで、演習も交えての興味深い内容だった。
「エディタを使って自分のやりやすい方法を探究して、財産である資料をテキストの形で残しておく。 私の場合はそれを実現する術がMIFESであり、MIFESのマクロでコマンドを作ることでもありました。20年以上かけて貯めてきたノウハウやマクロがあるので、MIFESからはきっと離れられないと思いますよ」
お話を聞き始めてから1時間半。あっという間の”授業”が、うれしいお言葉で終了した。(聞き手:メガソフト・Z)
お話をうかがいながら、数年前に「大学の授業でMIFESを使いたい」というお問い合わせがあり、どんな授業なのか気になりながら、体験版やアカデミックパックのことをご案内したことを思い出していました。
帰社後、サポートの履歴を調べてみると、それはまさに荻野さんからのお問い合わせだっことがわかり、「あのときの授業はこれだったのか」と資料としていただいたカリキュラムを見直した次第です。
さて、学校・教育機関でご使用の方や学生のみなさんのために、お得なライセンスをご用意しています。ぜひご利用ください。
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