一般社団法人Medical Excellence JAPAN
構想企画グループ 部長 金谷浩明 氏
Medical Excellence JAPANは、健康・医療の国際展開の推進という政府の方針のもとに、これを実践する中核的な組織として設立された一般社団法人です。
日本の優れた医療技術、医療機器、その他医療サービス等を必要とする国々へ提供しており(アウトバウンド)、まだ見ぬ医療空間を言葉ではなく体感してもらうためのツールとしてメガソフトVRソリューションをご利用です。
今回は、国や地域にあわせた医療空間を設計し、諸外国の要人にもプレゼンテーションを行っている金谷氏にお話を伺いました。
− 金谷さんは、医療施設の提案に以前より弊社の3D医療施設プランナーをご利用で、パースや模型を使ってプレゼンテーションをしてこられたと伺っています。
さらにメガソフトVRソリューションもご利用いただくようになりました。VRの威力はいかがですか?
異常(笑)。だって建物の中に入れるんですよ。ありえないです。
平面図やパースや、模型でさえ、頭の中で解釈して想像しないといけないけれど、VRは解釈も想像もしなくていい。その中にいるかのように普通に空間認識ができます。さらにデータを緻密に作れば作るほどそれは空間認識ではなく体験になってくる。
われわれはビジュアルを見せたいわけではありません。そこで行われる医療行為を全部理論化して考えているから、そういうことが最適解だと考えているから、それを余すところなく納得させたいわけです、相手に。それは平面図では説明できません。
だからVRなんです。
プレゼンする側にとってメガソフトVRソリューションは、それまで長い時間をかけて説明してきたことを総括し、最後に感動体験で設計と運用の理論をご納得いただくツールです。
金谷氏が作成した手術室のイメージ。人物や鋼製器具類は金谷氏の自作パーツ。
「なぜここに裏動線があるのか、どうしてここにこんな空間が必要なのか、
あちらではなくこちらで出入りするのはなぜなのか、そういうことをわかってもらうには、
VRで中に入ってもらって説明するのが一番です」(画像提供:Medical Excellence JAPAN)
病院のプレゼンテーションにVRはあっていると思います。
私たちMedical Excellence JAPANのプロジェクトのお客さんは、海外の投資家や医療運営事業者で、その人たちはあんな病院を作りたい、自分の国の医療に貢献したいと夢を語り、純粋で気高い理想をお持ちの方々です。それに対して、我々は技術者として存在しています。そのオファーに対して、希望や夢を解決するためにその場に行くわけです。
病院の建物は特殊なので一般のビルよりお金がかかるし、スタッフも医師・看護師・技士・薬剤師…といろんな職種の人が集合してやっと医療が成り立ちます。医療スタッフ以外にも給食センターの人もいるし、清掃の人もいるし、人件費も相当です。
非常に複雑で、お金がかかるし、うまく経営しないと事業に失敗するかもしれない、うまく運用しないと医療の品質が損なわれるかもしれない、事業者にとっては不安要素の多い施設なのです。
だからこそきちんと理論立てて考え、説明して、VRで中に入ってプランを体験してもらう。そうすると事業者は納得するんです。
一方で医療者は、VRで空間を体験しながらもっとこうしたい、ここはああしたほうがいいのではないかと考えはじめ、自分たちで相談し、私たちに意見を言い始めます。
Medical Excellence JAPANは単に病院のアウトバウンド事業をしているのではなく、現地の人たちに“病院と医療を作る”ということを学習してもらうのも重要な使命としているので、これはとても大切なことです。
Medical Excellence JAPANが会員企業に対して実施したVRを中心とした3D技術の勉強会の様子。
実案件の医療空間をVRで体験していただきました。(開催:2017年8月/写真提供:Medical Excellence JAPAN)
みんなで議論して、やりつくして、納得して、自分たちの思う通りの病院プランができると、お客さんはものすごく喜んでくれる。涙を流している看護師さんがいたりもします。それは自分たちが参加して作ったからなのです。
メガソフトVRソリューションは、職場をより良くするためスタッフが意見を出しあって協議する、ユーザー参加のプランニングができる道具だと思います。
− メガソフトVRソリューションのハンドコントローラーはお使いいただいていますか?
もちろん。あれはすごい、自分で作った空間を自由に歩けてしまうから。
自由に動きまわれると、設計者自身がいろんなことに気づけます。自分でプランの中を動き回っていると、”あ、前にも同じ失敗した”って思い出したりもするわけです。
病院は人の動きが複雑です。大きな病院でどこに行けばいいかわからなくなったことがあるでしょう?
それを解決するために空間認知をどうさせたらいいかとか、動線の処理をどうしたらいいかとか、こっちに誘導するにはどう見せるのがいいかとか、ずっと先のほうの見せ方も考えないといけない。
それは中に入らないとできません。模型ではわからないし、誰かではなく設計者自身がやらないといけない。
それをその空間の中に立って考えられる。
つまり、病院開設前に運営シミュレーションができるんです。
メガソフトVRソリューションは、設計者にとっても有用なツールですね。
「ハンドコントローラーで自分で操作して動き回ると、動線の取り方はこれじゃだめだとか、
ここに行く前にこういう段取りを済ませたほうが動きやすいんじゃないかとか、
そういうことに自分で気づくことができます」と、金谷氏(画像提供:Medical Excellence JAPAN)
メガソフトVRソリューションは自分の手で空間を作れますよね。
病院のプランニングは1年以上かけて行うことが多く、何度もプランを作り直します。自分で作るから、最初に作ったプランから最終プランまで、その過程のデータをすべて残してライブラリ化ができる。これは設計者にはとんでもない財産です。
病院設計は複雑なので、人を育てるのにとても長い年月が必要です。設計者は、自分の作った建物を見てここはこうしたほうが良かったかもと反省したり、人の建築を見てこういうの良いなと参考にしたり、たくさんの建築物を体験しながら学習します。ライブラリはそのまま良くも悪くもお手本として後輩の教育にも利用できます。それは中に入って隅々まで見て回って体験ができるからです。
メガソフトVRソリューションは病院設計者を育てる教育アイテムにもなりえると思います。
− 施主へのプレゼンテーションだけでなく、設計者のツールとしてもご活用いただいているんですね。 本日は貴重なお話をありがとうございました。
※取材当時の所属・役職等にて掲載しています。