MIFES User Report〜仕事人たちのエディタ〜
File06

TeX+MIFES で数学のテスト

数学の問題をTeXで作成

数学という教科、成績が良かったかどうかは別として、MIFESユーザーは「好きだった」という方が多いのではないだろうか?今回お話をうかがったのは、現役の数学の先生、田中徹さんだ。

田中さんが教鞭をとっているのは新潟県のとある私立の中高一貫校。はじめにお邪魔したのはその職員室で、田中さんの机の上には、教科書やたくさんの資料と、MIFESが入ったノートパソコンがきれいに整理されて置かれていた。

職員室の田中様

「職員室」に入るのは何年ぶりだろう。
見まわしたところ、黒板がホワイトボードに代わっていることとパソコンがあること以外は、自分の知っている職員室とあまり変わっていない感じ

さてここで、MIFESはどんなふうに使っていただいているのだろう。
「主にTeXファイルとCSVファイルを編集しています。TeX(※1)はテストの問題。CSVファイルは成績など生徒の情報を管理しているファイルです」
いかにも先生らしい使い方だ。では1つずつうかがってみよう。

  • ※1)TeX: 世界中で使われている組版ソフト。組版とは印刷物を作成するときの1つの工程のことで、活字を配置し紙面を構成すること。

なぜ田中さんはTeXでテスト問題を作っているのだろう。

「数学にはいろいろな記号があります。分数、ルート、極限(lim)、組み合わせ(nCn)…。(「あったあった」という声が聞こえてきそうだ)さらにグラフや図形も必要です。いろいろな要素を組み合わせてきれいにレイアウトするのにはTeXがよいのです」

ワープロソフトもかなり進化したが、まだまだ思うようにはいかないという。

では、そのTeXの作成にMIFESをどのようにご利用いただいているのだろう。
「テスト問題には決まったレイアウトがあります。ヘッダ、フッタなど、決まった部分の入力を行うキーボードマクロやマクロを用意してあります。キーボードマクロもマクロもキー操作に割り当ててあるので、レイアウトに合わせて数回キーを叩くだけで枠が出来上がるんです」
半オートマチック化されたMIFESでレイアウトを作成したあとは、問題文を入力するだけになる。作成したテスト問題は資料にもなる。

ところで試験問題を作るときの注意点やコツというのはあるだろうか?
「問題文の中の"X"とその横にあるグラフの"X"のフォントが違うと格好悪いですし、何より子どもが戸惑ってしまうのでフォントは揃えておかないといけない」
高校生にもなるとそれほど気にする必要もないが、中学入試は受験するのが小学生。問題の内容以外で悩ませないように気を使うそうだ。
「CAI(※2)の勉強をしたときにあったんですが、たとえば『番号で答えなさい』という問題の場合、『1.○○ 2.△△…』と書くと、『1』と答えたらいいのか『1.』と答えたらいいのかで悩む場合があるからそういう書き方は良くないということでしたね」

  • ※2)CAI:Computer Aided Instructionの略。学校教育などにコンピュータを活用すること

もうひとつのデータ、生徒の情報を管理しているCSVファイルについてもうかがってみよう。
「主に成績の管理ですね。1学期の中間テストから始まり、学年末のテストまで実力試験も含めて成績をつけ足していきます」
MIFES8では列を追加するための機能はないと思うのだが。
「大丈夫ですよ。マクロを作ってありますから」

定例の作業はすべてマクロになっているようだが、いったいどれくらいオリジナルマクロがあるのだろう。
「数えたことはないですね〜。すみません、続きは別室で」
職員室では、他の先生方のお邪魔になるので別室へ移動して、インタビューを続けた。

田中様画面

田中さんのパソコンの画面
左側にMIFES、右側にプレビュー画面がきっちりと配置されている。TeXの時もHTMLで顧問を担当しているクラブ活動のページを作成するときも、必ずこの比率で表示しているそうだ。このきっちり感がいかにも数学の先生らしい。


お世話になった先生との出会いがMIFESを使うきっかけに

256倍本とFD

田中さんもお持ちのDOS時代のMIFESの解説書(市販本)。
3.5インチフロッピーディスクとセットで持ち歩いていた方も多いのではないだろうか。

本当に使いこなしていただいているMIFES。使い始めたきっかけは何だろう?
「大学3回生の時にお世話になった先生がいい先生で、その先生に勧められたのが始まりです。その先生のもとでTurbo PascalやTurbo Cなんかのコンパイル言語を勉強したので、ソースを書くのにMIFESを使っていました」
田中さん自身が先生になってからも、ずっと使っていただいていたのだろうか。
「実は大学を出てすぐは、一般企業に就職してプログラムを作成していました。その頃ももちろんフロッピーディスクにはMIFESが入っていて、MIFESでプログラムソースを書いていました。プログラミング言語は確かRPGUだったと思います。
そのあと、縁あって今の学校に勤めることになったんです」

懐かしいプログラミング言語の名前が次々出てくる。本当にコンピュータがお好きなのだろう。

「Windows版の初期バージョンは使ってません。その頃は他のエディタを使っていましたが、Windows95が出てからはまたMIFESを使っています」
他のエディタを使っていたのに、なぜまたMIFESを使っていただいたのだろう。
「なぜでしょうね。やはり、使い慣れているからでしょうか…。あの[F6]から[F10]あたりの感触ですかね。
んーなんていうんでしょうね。[Ctrl]+[C]や[Ctrl]+[V]とはちがうあの優しい感じはやめられません。[Shift]+[F10]を3回くらい押したら涙出ちゃうね(笑)。もう手になじんでしまってますんで」
ちなみに[F6]〜[F9]は行単位の切り貼り機能、[Shift]+[F10]は【行の2重化】の実行。行単位の編集機能はMIFESの特徴的な機能でもある。
「あとはキーボードマクロの登録とキーに割り当てるのが簡単にできることでしょうか。やっぱり一番気に入っているのは自分用にカスタマイズできるところですね
代々引き継がれてきたMIFESの設定ファイルとキーボードマクロやマクロがたくさん登録されているライブラリファイル、そしてTeXで作成した数学の問題。そのすべてが田中さんにとっての大切な資産となっているようだ。


何がわからないかわかることが大切

「先生」は必ず誰もがお世話になるが、実のところ授業中と休み時間の先生しかしらない。「先生」のお仕事について少しうかがうことにした。

一般企業に勤めていると、毎月末や年度末、納期前などが忙しいが、先生が一番忙しい時期はいつだろうか?
「学年が変わる春ですね。新潟の私立高校は、公立高校の入学試験の後、3月半ばを過ぎたころにもう一度試験があります。その結果が出てからの数日間が1年の中で一番忙しいですね。クラス分けしたり時間割を作ったりします。」
一番大変なのは10クラス分の時間割を作ることだそうだ。
「コマが埋まればいいというものではなく、先生がブッキングしないようにやりくりします。残念ながらほとんど手作業なんです」

中学2年数学小テスト

お伺いした日の2日前に実施したという中学2年生の数学の小テストの問題をいただいた。
中学2年生はかなり前という方も、ついこの間という方も、トライしてみては?

※PDFファイルでダウンロードできます。

 問題用紙(file06_mondai.pdf)
 解答付問題用紙(file06_kaitou.pdf)

そういえば入学試験の問題を作成されるとうかがったが、それはいつごろ作成するのだろう。
「中学は1月に入るとすぐ入試なので夏休みの終わりにはほぼできています。2学期は微調整するくらいでしょうか」
考えてみると、入学試験・定期考査・実力テスト・小テストと、数学の先生は1年中数学の問題を作り続けているし、当たり前だが授業もずっと数学だ。数学嫌いには耐えられないが、子どものころから数学はずっと得意だったのだろうか?
「どちらかというと外を走り回って遊ぶタイプの子どもでしたが、ずっと数学は好きでした。大学も迷わず数学を選んだのですが、大学に入った途端その数学がわからなくなって5月病になってしまいました。
今思うと、ほんの短い期間なんですが、その時は自分の存在や勉強することについてなどいろいろ考えて、内にこもってましたね。でもその経験は、教師という仕事に少し役に立っていると思います」
どういうことだろう?
「『わからないときの気持ちがわかる』ということです。
先生になろうという人は、たいてい成績優秀な人たちで失敗した経験がない人が多いんです。だから『わからない』という生徒の気持ちがわからないんですね。でも教員には『何がわからないかわかってあげる』ことが必要なんです」
教えるプロの仕事がほんの少しだがわかったような気がする。

そんな田中さんから最後に、若い世代のみなさんへメッセージをいただいた。
「いろいろなことに興味を持ってほしいと思います。ひとつのことを突き詰めるのも大切なことですが、それと同じくらいいろんなことを知ることで見えてくるものがたくさんあります。多面的にものを見られる人になってほしいと思いますね」
これから「先生」を目指す人たちへのメッセージとして田中さんはおっしゃったが、いくつになってもどんな仕事をしていても大切なことだなと思い、インタビューのメモを囲っておいた。(聞き手:メガソフト・Z)

【レポート後記】

「田中徹」というお名前を見て、気付かれた方も多いのではないでしょうか?
MIFESフォーラムで、他のユーザー様からの質問にいつも丁寧に回答を書き込んでくださっているあの「田中徹」さんです。
いつかお会いして感謝の気持ちをお伝えしたいと常々思っていたので、今回のユーザー訪問アンケートに「MIFES フォーラムに書き込みを行い、少しでも良さを知ってもらおうと思っています」とコメント付きでご応募いただいた時は、軽くガッツポーズをしたくらいです。
5月の末に訪問を予定していたのですが、事情で延期になり、やっとお目にかかることができました。
朝一番のプロペラ機で小雨の大阪から、大河ドラマの影響で「愛」の文字があふれている新潟へ。お会いしてみると、パソコンとMIFESとそして「先生」というお仕事を愛している、思ったとおりのお人柄でした。

さて、田中さんもたくさん作成しているマクロコマンド。まだ試していない方も簡単なものからぜひ挑戦してみてください。

初心者の方は、マクロガイドのサンプルをコピーしてコンパイル、実行してみるところから。
プログラミングの面白さも体験していただけるかもしれません。
作成の手順や、ユーザー様からご応募いただいたサンプルソースも公開中です。

マクロガイド

  • ※マクロはサポート対象外です。あしからずご了承ください。
  • ※本レポート内のすべての情報は取材当時(2009年6月)のものです。
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