英辞郎(*1)というデジタル英和辞書をご存知だろうか。
最近はiPodやiPhone用アプリとしても発売されているが、Web上でも利用できる英和辞書である。
試しに「英辞郎 on the Web(*2)」をクリックして
「RESPECT」と検索してみてほしい。
「RESPECT」を含む項目が1057件抽出される。これだけあれば、和訳したい英文にマッチする用例が見つかるに違いない。
そのデジタル英和辞書の辞書マスターを日々更新し続けている英辞郎の製作本部にお邪魔した。出迎えてくれたのは大きな縦置きのモニターに表示されたMIFESのウィンドウだった。(写真右)
英辞郎の辞書マスターデータはMIFESで編集・管理されているのだという。
そもそも、なぜ英和辞書を作ろうと思ったのだろう?
「始まりは、自分のための文例集めでした。誰かのためではなく、自分のためなのでいつも使っていたテキストエディタのMIFESで作成・管理していたのです」
そのデータは170万行を超えた今も、日々増え続けている。
<英辞郎の辞書マスター>
記号で区切られたテキストデータ。
見やすくカラー設定されている。
早速そのデータを見せていただいた。
項目ごとに記号やいろいろな括弧で区切られて並んでいる。記号や括弧は【キーワード定義】されており、それぞれ色替え表示されていて見やすい。
「データがあれば、目的の単語をMIFESの検索機能で検索すればいいのです。あとは作成中のテキストにコピー&ペーストできるので特別な検索システムは必要ないのです」
前出の大きな縦置きモニターに表示された「英辞郎」はシンプルで巨大なテキストデータベースだったのだ。
MIFESをその辞書データの編纂(へんさん)にお使いいただいているというのだが、そもそも辞書データの編纂作業とはどういう作業なのだろう。
「他の辞書のことは知りませんが…」と前置きをして、教えていただいた編纂作業は、大きく2つ。
ひとつは新しい辞書項目の追加や、既存の項目への情報追加・修正の作業である。
各編集者から送られてくる辞書データには、新規追加データだけでなく既存の項目に対する和訳や文例の追加・修正項目も含まれている。それらのデータを辞書マスターに反映する際、既存項目の位置を発見するのに活躍するのがMIFESの【グローバル検索(grep)】機能。辞書マスター全体を一気に検索して検索結果リストで該当箇所を確認し、目的の辞書項目位置へタグジャンプして追加・修正を行う。
グローバル検索結果リスト(右側)と、結果リストからダブルクリックでジャンプした辞書マスター。
対象の文字が黄色でハイライトされて一目瞭然。
もうひとつの作業は、用語の表記や変更にともなう辞書マスター全体の変更作業だ。
例えば、これまでひらがな表記が標準とされていた言葉が、漢字表記を標準とするように変更になった場合は、辞書内の表記もそれにならう表記に変更する必要があるという。
こちらの作業も正確に該当個所を見つけ出し、間違いなく、また抜けなく変更しなければならない。
いずれの作業にも求められるのは正確さ。1箇所でも間違いがあると英辞郎の評価に直結してしまう。
確実さ、操作性、巨大データを扱うときの他のエディタにはない高速性。いずれの面でも「MIFESがなければ英辞郎は作れません」
「右手の小指が痛くてたまらなくなったら、これを使います」と見せてくださった「ペダル」。
これを踏むと[ENTER]が入力できるそうだ。作業のハードさがうかがえる。
医学用語、IT用語…世界中のあらゆる技術の進化や情報のグローバル化に伴い、次々に言葉が誕生し、退化している今日、辞書データの編纂作業は終わることはなく、毎日朝から夜遅くまで平均して15、6時間はパソコンの前に座っての作業が続くのだそうだ。
「集中力が途切れそうになったら10分くらい目を閉じて横になるんです」
ハードかつシビアな作業が続く中で見つけた疲労回復法をスタッフの一人が教えてくれた。目の疲れにはカシスがよいらしい。試してみようと思う。
英辞郎のメインスタッフの方は、MIFESをDOSの時代からご利用いただいているヘビーユーザー。
入力・編纂作業を省力化するためにあらゆる機能をご利用いただいている。
<文字列の登録/挿入画面>
「36個では足りないくらいです」とご要望もいただいた。
【文字列の登録/挿入】機能もそのひとつで、使えるアルファベット26文字と10個の数字はすべて登録済み。よく使う定型語は[F4]→英数字キーの2ステップで入力できる。
キーボードマクロやマクロコマンドも「シンプルなものばかりなのですが」割り当てられていないキーがないくらいライブラリに登録されており、それらは歴代のMIFESから引き継ぎ続けて今日に至っている。
最後に、今後の英辞郎について聞いてみた。
「もっともっと辞書データを増やして、分野を問わない『なんでも載ってる辞書』を実現したいのです。それがあれば、私たちだけでなく、私たちの子孫も英語に苦労しなくて済むはずです」
コミュニケーションのための英文作成にも、英文の技術文書の読解にもデジタル辞書は必須アイテム。英語が苦手な私としてもぜひ実現してほしい。
そして、そこでも何らかの形でMIFESがお役に立てれば、うれしい限りである。(聞き手:メガソフト・Z)
取材の途中でチラリと「MIFESから『英辞郎 on the Web』を呼び出せないでしょうか?」という話をしたら、後日、【インターネット検索】機能を利用した方法をご連絡くださいました。
手順は以下のとおりです。MIFESユーザーの方はぜひご利用ください。
[操作手順]