これから建築・インテリアのプレゼンテーションテクニックについて連載します。そこで、今回はその番外編として、プレゼンテーションが苦手だという方に私の経験を踏まえ、それをどう克服するかを精神的な側面からアドバイスしたいと思います。
私は小さい時から口下手の上、あがり症で随分苦労しました。これまで、ここぞという時にいつも失敗してきました。設計の仕事とは別に長くデザイン教育に関わってきたので、人前で話す機会はたくさんありました。
しかし、あらたまって講演などを依頼されると、その前夜は心配でよく眠れず、当日は緊張して話したいことの半分も伝えることができず、終わった後は後悔の連続でした。
そこでどうしたら良いかを考え、思いついた克服法をいろいろと試してきたので、最近では失敗することが少なくなってきました。その方法を紹介します。
緊張したりあがったりするのは生まれもったものなので、しょうがないと諦める。プレゼンは、うまく話をすることが目的ではなく、伝えたい内容を聞き手に正確に伝えることが重要と割り切ります。
図などを追加してわかりやすいように工夫をし、重要なところは聞き手の反応を見ながら丁寧に説明するよう心がけます。
プレゼンテーションがうまくいかなくても落ち込むのではなく、少しでもうまくいった部分を見つけます。その小さな進歩を評価し、今後に役立てます。今回自己評価で30点ならば、次回は33点取れるように頑張ります。
積み重ねていけば、いつの間にかいつも60点は取れるようになるでしょう。
少し多めに話す内容を準備し、必要に応じて話題を変えられるようにしておきます。話す予定の倍の準備があれば失敗しても、200%のうち半分の100%が実行できていたら大成功と考えます。
現場でのトラブルはつきものです。あらかじめいろいろな不具合を想定して準備しておけば、失敗をかなり防ぐことができます。事前にプレゼンテーションのリハーサルやテストができる場合はそれを行います。
しっかり問題点をチェックしておき、トラブルを未然に防ぎます。
どうしてもその時間が近づくと緊張します。そのときは、深くゆっくりとした鼻呼吸を繰り返します。4秒吸って6秒かけて吐き、呼吸に意識を集中します。そうすると自然と気分が落ち着きます。
発表ではいきなり本題に入るのではなく、その場で気がついたことを一言でもいいので話します。その結果、緊張した雰囲気がいくらか和み、スタートしやすくなります。
原稿を棒読みするのではなく、発表内容の箇条書きのメモを見ながら発表します。そうすれば、緊張で頭が真っ白になっても内容を理解しているので、自分の言葉で喋ることができます。
大事な項目を飛ばすことも防げるので、わかりやすい発表になります。
作者プロフィール
一級建築士事務所 河村工房 主宰 河村容治
博士(美術)、日本インテリア学会名誉会員、元東京都市大学都市生活学部教授
主な建築作品:朝霞市コミュニティセンター、氷川生花市場、下北沢MTビル(住宅+商業ビル)、集合住宅「季庵」
建築からインテリアまで、CADをフル活用した設計を行う。クライアントの要望を大切にした、キメの細かい住宅設計を得意とする。
設計活動のほか、女子美術大学、武蔵野美術大学、東京都市大学などでインテリア教育にたずさわる。 著書に「とびきり贅沢なプレゼンテーション」、「やさしく学ぶインテリア製図」(最新刊、共著)など。