導入事例


建築甲子園対策を機に3Dアーキデザイナーを導入、
過去の優勝作品を分析して、ビジュアル的な効果が必須と考えた

神奈川県立小田原城北工業高等学校
教諭 小澤 桂先生 / 課題研究チームのみなさん(2021年度)

神奈川県大会・準優勝の小田原城北工業高等学校の作品。タイトル「現代と過去をつなぐ五霊の歴史~サスティナブルな地域社会の実現に向けて~」

▲神奈川県大会・準優勝の小田原城北工業高等学校の作品。
タイトル「現代と過去をつなぐ五霊の歴史~サスティナブルな地域社会の実現に向けて~」

建築甲子園、優勝を目指して、3Dソフトを導入

- 2021年度・建築甲子園・神奈川県大会での準優勝と敢闘賞受賞おめでとうございました。
2作品エントリーして2作品とも受賞という快挙でしたね。
今回、建築甲子園エントリーに向けて弊社ソフトをご導入いただいた理由を聞かせてください。

小澤先生:

4月にエントリーすることを決めて、生徒たちがプランを考え始めたのですが、同時にどうやったら優勝できるだろうと過去の優勝作品を見て傾向と対策も始めていました。
そこからビジュアル的な効果を高めたほうが賞は取りやすいだろうということになりました。
そこで、3Dソフトで色彩も付けられるソフトを探すことになりました。授業で使っているCADソフトがあるのですが、3Dソフトが本校にはなかったので、比較検討した結果、メガソフトさんの3Dアーキデザイナーを採用させていただきました。

生徒のみなさんに質問

3Dアーキデザイナーを使ってみていかがでしたか?

「2年生でCADソフトは使っていたけれど、3Dアーキデザイナーは初めて使ったので、最初は戸惑いました。でも使っていくうちに、ここを押せばこういうのが出てくるというのがわかってきて、だんだん使い慣れていきました。」

「一番使ったのはパースを出力する機能です。プレゼンボード用に1枚の紙にまとめる必要があったのですが、そこに載せる画像を出力するためでした。一部屋ごとのイメージはもちろん、隣部屋や上下の部屋との連携と違いを出すために、近すぎず遠すぎず、ちょうどいい視点を決めるところでは、随分工夫しました。」

「時間に追われてはいたのですが、いろいろな家具を置いてみたりして、みんな楽しみながらできたかなと思います。」

「私は螺旋階段を作ったのですが、少しずつ回転させて高さも調整して…というところが大変でした。」

「担当した施設の中に畑があるのですが、畑の野菜までパーツが揃っていたのに驚きました。自動販売機は自作しました。いろんなことができるので、こだわったものも作成できておもしろかったです。」

   
  左)「SUBMARINE」の2階部分の図面 右)自作した自販機のイメージ

授業にも3Dソフトを組み込んでいきたい

- 小澤先生は最初にご連絡をいただいた時から、授業への導入もお考えだとおっしゃっていました。

小澤先生:

はい、そのとおりです。
3Dアーキデザイナーを使わせていただいたきっかけは、建築甲子園へのエントリーでしたが、授業でも3Dソフトの導入を考えています。
立体的にものを捉えるということ、図面を描いてそれを3次元で見てみるということ、3次元でモノを考えてよりリアルに近いものを作る訓練をすることは、建築を学ぶ上でとても大事です。

2020年の法改正で、高校卒業後一定の科目を履修すればすぐに2級建築士の試験が受けられ、合格し、実務経験2年で建築士となります。そうなったときに、彼らが社会に出て即戦力として活躍できるよう、高校の授業でも実務に近い経験ができるように環境を整えなければと考えています。
ですから、3Dでデザインすることが主流になりつつある今、3Dソフトを授業に組み込んでいかないといけないと思っています。

「現代と過去をつなぐ五霊の歴史」の立面図と外観パース

▲「現代と過去をつなぐ五霊の歴史」の立面図と外観パース

3Dアーキデザイナーを導入後の様子をみていると、生徒たちは最初こそ戸惑っていましたが、あっという間に使いこなしていましたので、授業でも使って行けそうだと感じました。一括導入は難しいかもしれませんが、少しずつライセンスを増やして授業に活用していきたいです。

神奈川県大会・敢闘賞の小田原城北工業高等学校の作品。タイトル「SUBMARINE」

▲神奈川県大会・敢闘賞の小田原城北工業高等学校の作品。タイトル「SUBMARINE」

- ところで、先生は建築甲子園のような、生徒が参加できるコンテストは必要だと思われますか?

小澤先生:

はい、思います。
先ほど工業高校を卒業すると2級建築士の受験資格が得られるという話をしましたが、工業高校の建設科から即戦力となる人材を送り出していくためにも、コンテストに出場する、すなわち、誰かに評価されるという取り組みはとても有効であり、経験値もあがると思います。

生徒のみなさんに質問

今回の取り組みでどんなことを得ましたか?

「今までやったことに対してはっきりとした結果が出ないことが自分の中で多かったのですが、結果が出て評価いただけたので自信がつきました。」

「今回は公共の施設だったのですが、建物を考えるときにも使う人のことを一番に考えることが大切だということを学びました。」

「大学に進学しても今回と同じような課題があり、少し不安だったのですが、賞を取れたので自信がつきました。今回の経験を活かせたらいいなと思っています。」

「設備や出入口の場所など動線や使い易さを考えて設計できたと思います。専門学校に進学しますが、今回の経験を踏まえて今後の課題や将来の仕事に活用していけたらなと思います。」

「題材にした施設について親や地域の人にお話を伺ってみて、自分だけの目線ではなく周りの人の意見をたくさん集めたうえで、利用者に使い易いものを作るということが大切なのだなと思いました。」

校内的には、今回の作品を全校生徒に向けて10分程度でプレゼンテーションを行ったのですが、それを見た下級生たちが、夏休み返上で大変な作業になることも知ったうえで、3年生になったら自分も作品作りに参加したいと申し出てくれています。後に続いていくことで、本校のレベルアップにもつながっていくと思いますので、よい効果が得られたと嬉しく思っています。

対外的には、2019年にも建築甲子園に出場したのですが、その年は受験生が増え、コロナの影響で建築甲子園に出場できなかった年は受験生が半減し、今年はまた受験生が増えました。
これは建築甲子園に出場したことで、本校に建設科があること、また積極的に活動して結果を出せる学校だということを、建設の道に進みたいと思っている生徒さんやその保護者の方に知っていただけたことも一因ではないかと思います。

昨今、工業高校の生徒数は全体的に減っていますので、学びたい生徒にとっても、学校の戦略としても、このようなコンテストに出場することによるメリットはたくさんあると思います。

「SUBMARINE」の各所のパース。家具や人をたくさん置いて、完成イメージが伝わるように工夫した

▲「SUBMARINE」の各所のパース。
 家具や人をたくさん置いて、完成イメージが伝わるように工夫した。

-授業にも、また建築甲子園をはじめとする高校生を対象にした建築コンテストにも、ぜひ3Dアーキデザイナーをご活用いただけると嬉しく思います。貴重なお話をありがとうございました。
そして、本当におめでとうございました!

小澤先生(左)と建築甲子園に出場したみなさん。この度は本当におめでとうございました。

▲小澤先生(左)と建築甲子園に出場したみなさん。この度は本当におめでとうございました。

※建築甲子園とは
建築教育課程のある工業高校・高等学校を対象に実施される建築コンテストで、2021年・第12回大会のテーマは「地域のくらしーこれからの地区センター」。都道府県建築士会単位での審査により全国大会出場校を選出、審査会で優勝、準優勝他を決定・表彰する。(全国大会の結果はこちら
公益社団法人 日本建築士連合会・主催。

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