秋田県立秋田工業高校 建築科では3Dマイホームデザイナーを導入し、住宅設計、3Dパースの作成を学習されています。
本校では、毎年夏休みに小学生の親子を対象に「親子ものづくり教室」を実施。各科、趣向を凝らした内容で開催されているということで参加者も多く、建築科は3Dマイホームデザイナーで家のデザインを体験してもらうということで見学させていただきました。

親子のコミュニケーションの場にも

前回までの「親子ものづくり教室」は、椅子やちりとりなどの木工制作を中心におこなわれていたそうですが、3Dマイホームデザイナーを導入したことから、今回はパソコンで家のデザインをしてもらうという初の試み。
3パターンの間取りプランから1つ選んでもらい、間取りを完成させて立体化。3Dで外観と室内1室をデザインしてそれぞれパースを作成し、印刷したパースと親子の写真を台紙に貼り付けて夏休みの自由研究として完成させるというもの。

親子ものづくり教室

デザインする際、単に家具を配置したり壁紙を張り替えたりするだけでなく、デザインのポイントをどこに置くか、どう見せると説得力があるかということも考えながらパースのアングルを決めてくださいとの説明もあり、まずはどういうイメージにするのか親子で検討。子供が建具や家具を配置し始めると「こっちにドアが開いたら危ないなぁ」とか「そこにテーブルを置いたらお父さんは通れないよ」など親からアドバイス。それを聞いて「開くドアをやめて引くドアにする」とか「これだったら大丈夫?」など、家のことを知る大人のアドバイスに、子供はどうすれば住みやすくなるかを試行錯誤しながらパーツを配置していました。

立体化してから外壁材や壁紙などをコーディネート。素材が多いので、相談しながらいろんな素材を何度も貼り直していました。外観パースを仕上げるために、車や樹木などのパーツを配置。見たことがある車がパレットに表示されると小学生もヒートアップ。ほかに人物や動物などのパーツも見つけ、中には周囲に道路や電柱まで配置する小学生も。「時間がなくなるよ」という親や生徒の声も右から左で夢中になってパーツを配置していました。
ようやく印刷したい外観と室内の視点を登録。パースの印刷は学校側でおこない後日配布ということで「親子ものづくり教室」は終了。


「教える」ということが生徒の主体性を高める

親子ものづくり教室

参加された親子はもちろん3Dマイホームデザイナーは未経験。親子2組に対して生徒が1人担当につき、ソフトの操作方法などを説明されていましたが、2時間という短時間で作品を完成させてあげないといけないことからか、説明する生徒の表情は真剣で、小学生にも判りやすい言葉で丁寧に説明されていました。また、それを聞く小学生もその真剣さが伝わってか、真面目な態度で説明を聞いていたのも印象的でした。

応対に困っている生徒がいると、周囲の生徒が応援に入るなど、担当の親子以外にも常に周囲に気を配りながら協力して対応し、各生徒が主体的に行動されていました。
親子が退室してからほっとしたのか、担当の親子の印象や自分自身に不足していた操作方法などを意見交換。初めてながらも上手く進行できたことで満足されていました。


ソフトがつなぐ社会とのコミュニケーション

建築パースの仕上げ方法の変遷

秋田工業高校建築科教諭の遠田弘志先生は、「3Dは建築物の非常に有効な提案手段。パースを見せることでイメージを共有できます。」「工務店等ではまだまだ3Dを導入されているところも少ないので、これからは3Dの技術も就職する生徒にとって非常に有効になると思います。」とのこと。
近郊の工務店や設計事務所と交流があることから、3Dマイホームデザイナーを導入されているところがあれば情報交換して、相互に技術を高めていきたいともおっしゃられていました。

また、校舎を改築する計画があるそうで、現在の校舎、改築後の校舎を3Dマイホームデザイナーで作成して記録として保存されたいとのことで、課題研究等で取り組んで行きたいということでした。


※本レポート内のすべての情報は取材当時(2009年8月)のものです。