20周年へのメッセージ
株式会社アスキー 取締役 遠藤 諭 様


MIFES-98でハノイの塔を解く


『月刊アスキー』1987年11月号は、特集1が「エディタの研究」、特集2が「デスクトップパブリッシング」だった。特集1の書き出しを見ると「人間の思考過程では記号は何の役にもたたず、もっぱら視覚に頼る方法で行われているという興味深い議論がある」など、と始まっている。随分と上段に構えたものだなと思うが、特集2の「デスクトップパブリッシング」では、まだ「DTP」という略語はなく「DP」と記述されている。ソフトウェアが、これからまだどう発展していくのか分からないそういう時期だった。

さて、エディタの特集中、5ページにわたる表で24本のエディタの機能を比較している。

EE Ver.1.01 イースト(株) V-EDIT/98 Ver.1.10F (株)昴ソフトウェア 
EZ Ver.3.0 (株)ピーシーワールドジャパン VEDIT Plus Ver.2.32 (株)サザンパシフィック
FINAL Ver.1.2 (株)エー・エス・ピー VERSATILE 淀川産業(株)
LED Ver.1.52 (株)エー・エス・ピー ViEDIT Ver.1.00 (株)アスキー
MIFES-98 Ver.2.20 メガソフト(株) Word Master+Ver.2.03 マイクロプロ・ジャパン(株)
PEDIT Ver.2.1 日本アルゴリズム(株) Word Star Ver.3.30 マイクロプロ・ジャパン(株)
Pmate Ver.4.0 (株)ライフボート APS/SPF 丸紅エレクトロニクス(株)
ペンギンエディターVer.3.1 ペンギンソフト EMACS Ver.1.2 UniPress Software
RED++ Ver.0.95 (株)ライフボート Epsilon Ver.3.30 Lugaru Software
SEDITOR Ver.2.1a エイセル(株) Personal Editor II IBM
TEXT-MATE Ver.2.15 (株)ユーザーズ・ソフト Professional Editor IBM
USE Ver.1.0 ユニー(株)バイナス事業部 XTC Ver.3.0F Wendin

※メーカー名は当時の発売元で開発元と異なる場合あり。EMACS以降は輸入版。

1本1本解説してもよいのだが、16ビット用のエディタが出揃って、何かとても新しいことが始まった印象があった。


MIFES-98に関する記事を読むと、同年春に発売されたVer.1.42にあった不備が、かなり解消されているとある(CTRL-Yの行削除でカットバッファの中身が破壊されるなど)。それなりに、日本ローカルな素朴な側面を残していたエディタだったのかもしれない。もっとも、“完成度の高さと安定感”と見出しされているとおり、この特集そのものが、MIFES-98のバージョンアップに合わせて組まれたものであることをいま思い出した。

個人的にも、MIFES-98には大変にお世話になっている。月刊アスキーの最長連載は、現在のところ「近代プログラマの夕」だと思うが、これの第一回が“MIFES-98の英字マクロを組む”というものだった(エディタ特集の前月号掲載=単行本未収録)。MIFES-98のマクロ機能は、いわゆるキーボードマクロの延長で、ロジックの制御は疑似操作という文字列で行うのだが、分岐や大小比較、呼び出しなんてのは用意されていない(それでも貴重だったのだが)。そのマクロ機能でハノイの塔を解いてみましょうという内容。いまはさすがに、こういうの書く気になる人はいないでしょう。

MIFES-98 Ver.2.20の英字マクロでハノイの塔を解く

(月刊アスキー 1986年10月号より)

MIFES-98のハノイの塔のマクロ

当時、発見されて間もないPeter Bunemanと
Leon Levyのアルゴリズムを使用。

ハノイの塔のマクロソース

マクロ実行前

マクロ実行前の画面

数字列を円盤に見立てた初期状態。
大きい順に4444、333、22、1と下から積んである。


マクロ実行後

マクロ実行後の画面

この例では4枚の円盤で割とすぐに求めまるが、
11枚の場合では1時間以上かかってしまう。

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【プロフィール】

写真遠藤 諭 (えんどう さとし)

株式会社アスキー 取締役

1956年生。プログラマを経験後、1985年より月刊アスキー編集部。編集長を経て、2003年より現職。
著書『計算機屋かく戦えり』(アスキー刊)ほか。

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