いまでこそミュージックCDデザイナー3のようにパソコンで音楽を楽しむためのソフトが当たり前に出ていますが、パソコンでCD品質のサウンドデータがパソコンで自然に扱えるようになったのは、ごく最近のことでした。
5年前ほどは、データの量がパソコンで処理するには多すぎたためです。CDのデータフォーマットは、実は1分間に10Mバイト以上という非常に容量の大きいものなのです。
そのためこのデータは、結構な容量となります。3分の曲を15曲収めるとどのくらいの容量が必要になるかは想像に難くありません。これは数十GBというディスク容量しかない現在のパソコンでは、さすがに大量に扱うのは難しい容量です。
こうした問題を解決するべく、CD程度の音声の品質を保ちつつ、ファイルの容量を10分の1程度か、それ以上に小さくできる技術が出てきました。それが圧縮オーディオ技術です。
圧縮オーディオ技術のもととなっているのは、「不必要なデータを取り除き、効率的なデータ化をする」という考え方です。
人間の耳は、基本的に凄い能力を持っていますが、その一方で非常に差が見分けにくいところがあるのです。
たとえば、大きい音のと同時に鳴っている小さい音などはほとんど聞こえませんし、極端に高い音や低い音などもほとんど聞こえない――と言われています(ただし、とくに高い音に関しては、まだ分かっていない点が多くあります)。
こうした能力は、目における「錯覚」のような癖を、耳も備えている――と考えるとしっくりくるのではないでしょうか。
さて、こうした聞こえにくい情報までもデータ化しているのがCDのフォーマットなのですが、そうした部分を省略してしまえば、データを小さくすることができます。
そうした考え方をもとにしてできたのが、圧縮オーディオフォーマットです。そして圧縮オーディオファイルは、そうしたデータを収録したファイルのことです。
圧縮することでディスクに占める容量も小さくなりますし、データが小さくなりますので、通信でも送りやすくなります。
こうした圧縮の考え方は、もともとは映像の分野から導入されたものです。代表的なものとしては、自然画データの画像フォーマットであるJPEG(ジェイペグ)方式が挙げられます。JPEG方式の画像は、目に見えにくい情報をカットすることで、ファイルの容量を数十分の1から数百分の1程度までに小さくしています。ただし、パソコンのデータを圧縮したZIPファイルやLZHファイルのように、完全に元に戻す(解凍する)ことはできません。
こうした考え方を音声データに応用したのが、圧縮オーディオ技術です。もともとは放送用の衛星中継や、電話回線による中継用に使われていた技術です。速度のあまり高速でない回線でも、放送に耐えるだけの品質の音声を中継できるように設計されたものでした。
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