物流倉庫レイアウト・マテハン機器提案ソフト 物流倉庫3D | メガソフト
初めまして 物流コンサルタント 株式会社リンクスの小橋と申します。
これまで百を超える物流倉庫の現場を見てきた経験をもとに、物流倉庫についてお伝えいたします。
そこで、今回物流倉庫の基礎知識とレイアウトの考え方と、他社での事例なども交えてお伝えできればと思います。
後編では、最先端のロボティクス(ロボットを使った作業の自動化)などにも触れて、進化する物流倉庫の設備環境についてもお伝えいたします。
物流倉庫の種類は、TC(トランスファーセンター) DC(ディストリビューションセンター)に分かれます。
TC(トランスファーセンター)は通過型の物流倉庫で、在庫を持たないで、別々のベンダーから納品された商品を店舗別や方面別に積み替える作業を行う物流倉庫となります。なので、保管場所はなく、積み替え場所がメインとなり、クロスドッキングなどとも呼ばれます。時間との戦いになるので、事前に入出荷に関する正確な情報が必要です。レイアウトに関しても、入荷用と出荷用のトラックの積み込み場所を考慮して設計します。大手量販店やコンビニエンス向けの店舗納品などで利用されています。
DC(ディストリビューションセンター)は在庫型の物流倉庫で、入荷した商品を一度倉庫で保管して、本部からの出荷指示をもとに商品を棚などからピッキングして、出荷先毎にまとめて出荷します。なので、ここでは商品の形態にあわせた保管と、商品のピッキング作業を考慮したレイアウト設計になります。販売計画にあわせて在庫を保管するため、製造や発注に時間がかかる場合などは、大在庫を保管するスペースを確保する必要があります。保管する在庫が増え、倉庫スペースが広がると、出荷指示での商品を見つけ、ピッキングするのも時間がかかり物流費が上がる原因のひとつです。
また、TCとDCをひとつの倉庫で併用する場合もあり、在庫保管用と積み替え用のスペースを商品の流れを考えてレイアウトする場合もあります。さらに、倉庫の中で検品をしたり、タグをつけたり、商品のセット組みなどの製品化をするプロセスディストリビューションセンター(PDC)や、商品の注文から配達まで、全ての通販業務を行うフルフィルメントセンターもあります。
【温度管理】
物流倉庫において「温度管理」は重要です。特に食品などは、生命に関わる領域なので、専用の倉庫での管理が必要で、取り扱う商品によって温度帯も異なります。
●常温倉庫:もっとも一般的な倉庫で、倉庫内の温度は特に調整しないため、外気温の影響を受けやすく、夏は温度が高くなり、冬は低くなるため、保管温度によって商品の状態が変化しない事が条件となります。とは言え、中で働く作業者のため、空調設備を入れている物流倉庫も増えていいます。
●定温(低温)倉庫:温度が一定に保たれる倉庫で、食料品などは10°C以下の保管環境にて、冷蔵倉庫(チルド)、冷凍倉庫(フローズン)と管理する温度帯で区別しています。設備環境に費用がかかるため、倉庫代も常温倉庫と比べると高くなり、対応できる物流倉庫も限られます。
【商品の形状】
取り扱う商品アイテムの形状(荷姿)によっても、保管設備含め、レイアウトが変わります。段ボールで入荷されて段ボールのままで出荷する場合と、1点1点商品を箱から出して、保管する場合があります。その場合の単位は、カートン、ロット、バラと呼ばれることもあり、レイアウトを考える上で大切になります。アパレル商材などはバラで管理する場合でも、畳んだ状態での保管とハンガーでの保管もあり形状も違います。
段ボールのままでの取扱は、パレットと呼ばれる荷物を載せる荷役台で、段ボールをパレットに乗せたまま、フォークリフトなどを使ってトラックに積込みます。そこでのレイアウトは、パレット単位での保管に適した配置になり、保管効率を上げるために、天井高く、ネステナーと呼ばれるパレット保管専用の什器を使って、商品が段ボールの重さで潰れないように、段ボールの上げ下げをなるべく少なくできるような什器とレイアウト構成が必要になります。
保管ラックとしては、保管形態である、平置き、重量(パレット)ラック、軽量ラック(間口)、軽量ラックなどに分類されます。保管する商品の容積や、形状、重量によって設備が異なります。アイテム別の在庫容積から、理論的な保管形態が決まり、保管パレット数や間口数が決まります。そこから必要とする保管設備やレイアウトを決定します。
また、その場合は、フォークリフトでの作業となるため、フォークリフトの旋回など含め、物流倉庫内の通路幅を考慮したレイアウトになります。一般的なフォークリフトだと、機種にもよりますが、約3000mmが必要となり、保管効率と作業効率は、両方とも物流コストを下げるには、大切なのですが、レイアウトを組む上で、どちらを優先するかを検討する必要があります。
フォークリフトなど運搬機器によって、重い荷物の上げ下げが楽になりますが、人と接触して大事故になる可能性もあるため、死角になる場所含め、フォークリフトや人が通る動線と呼ばれる通路の確保など安全を十分配慮したレイアウトが必要となります。
店舗や取引先などの法人企業様向けのデリバリーを行う倉庫はBtoB倉庫、インターネットなどで購入された消費者様宛にデリバリーする倉庫はBtoC倉庫と呼ばれることが多いです。
法人企業様向けの発送業務のBtoB倉庫と、不特定多数の個人向けの発送業務のBtoC倉庫では、業務の流れが多少異なります。特に1オーダーあたりの商品数の違いは、レイアウトを考える上でも重要となります。
BtoB倉庫は企業によって、卸先への納品形態が異なることもあり、物流倉庫の中での専門性や特殊作業が求められることも多く、標準化が難しいとされてきました。BtoC倉庫は規模により作業内容についても効率面から多少の違いはあるものの、流れはシンプルで機械による自動化がし易いことも多いです。最新鋭の大型倉庫で人の代わりにロボットが動いているのもBtoC倉庫で、今後労働人口の減少や人件費の高騰などを考えると、BtoC倉庫の領域で自動化が、今後ますます増えていきます。
今後インターネットでの通信販売が増え、BtoC倉庫の需要が増えてくる中で、ロボットを使った作業が増えてくると、レイアウトも、業務の流れをどう設計するかが重要となってきます。レイアウト=保管効率だけでなく、作業効率についても、システム設計から運用フローまでを考慮して考えてる必要があります。
今回のタイトルにもある物流倉庫のレイアウト攻略法ですが、これまで触れてきた、TC、DCの物流の種類から温度管理含め、保管アイテム、さらには法人向けBtoBと個人向けBtoCの違いなどすべてを考慮して考える必要があります。
ただ、極めて重要な指標が、「保管効率」と「作業効率」です。保管効率はスペース面積における保管量の最大化を目標に、商品の形状によって、どのように保管すると保管効率が上がるのか?通常の物流倉庫では天井高が約5メートルあるため、その高さを有効活用し、保管効率を上げるにはどうしたらいいのか?通路の幅は無駄に広くないか?なども検討課題になります。ただし、保管効率が上がっても、作業効率が悪くなってしまっては意味がありません。商品の入荷→保管→出荷の作業の一連の流れの中で、「歩く・動かす・探す・考える」といった行動をどれだけ減らせられるか?を実現するためのレイアウトはどうあるべきかを考える必要があります。
そうなると、作業の流れ含め、作業動線が重要となります。攻略法としては、
①商品の出荷頻度での配置:売れ筋を手前に置くことで、歩く歩数が減ります。また、商品を配置する棚の高さによってしゃがんだり、台に登ったりする機会を減らすことも、効率化になります。
②作業動線:出荷頻度によって、レイアウトを変え、ピッキングでの歩数を減らすため、一筆書きのようなイメージでピッキングできるように対象商品のリストを設定します。また、入荷、保管、出荷までの作業の流れにあわせてレイアウトを設計します。
③通路幅:作業者が双方向で通るのか?一方通行として、作業動線が重ならないよう設計するのかによって、通路幅を変える必要があります。カートを押しながらのピックだと900mm~1200mmの通路幅が必要になります。
ピッキング方法もオーダー内容によってかわります。
①シングルピッキング:出荷オーダー毎に保管棚からピッキングして、商品を取り出します。「摘み取り方式」「オーダーピッキング」とも呼ばれています。作業は単純ですが、歩行距離が長くなるといった問題があります。
②トータルピッキング:複数の出荷オーダーの商品をまとめて取り出し、仕分け場にてオーダー毎に分ける方法です。「バッチピッキング」「総量ピッキング」「種まき方式」とも呼ばれます。こちらは、まとめて集荷する分、歩行距離は短くなりますが、振分処理の工程が増えることになります。仕分け作業をサポートするマテハンもあり、デジタルアソートシステム、ゲートアソートシステムなどと呼ばれています。
③マルチピッキング:複数の出荷オーダー単位でピッキングするのですが、エリアやオーダー内容毎に細かく分けることで、仕分けの作業をピッキングと同時に行います。シングルピックとトータルピックの良いところを合わせた感じです。