プロから学ぶ極意睡眠環境とインテリア
Let’s learn the interior.
株式会社イワタ 代表取締役社長岩田 有史
日々の暮らしをいきいきと心地よく過ごすには質の高い睡眠が欠かせません。
近年では睡眠に関する科学的な研究が進み、日常の生活習慣に加えて睡眠環境が眠りの質に影響することも明らかになりました。
厚労省が発表した「健康づくりのための睡眠指針2014」には質の良い眠りのために心がけるべきことが簡潔にまとめられています。
質の良い睡眠を手に入れて、体と心の健康を保ちたいものです。
寝室環境
睡眠環境は寝室の環境と寝床内の環境に分類することができます。まずは、寝室について考えてみましょう。
第6条では温度、湿度、音、光の4つの要素が取り上げられています。寝室を設えるうえで重要なのは環境要因から眠りにくさの原因を取り除くという視点。ともすれば、ハイテクの仕掛けを配置して光や温度、音響などを人工的にコントロールすれば快適な寝室が出来あがると考えがちです。
しかし、それ以上に大切なのは温度、湿度、音、光などの基本的な要素を精査し、それらが不眠を招く原因になっている場合は、その問題点を改善することなのです。
眠りは加齢とともに浅くなりがちで、睡眠中の環境変化による影響を受けやすくなります。眠りの環境が悪いことに気付かず、慢性的に安眠が妨げられている場合もありますのでこうしたチェックは欠かせません。
○ 温度
第6条では、寝室や寝床の中の温度や湿度は、体温調整の仕組みを通して、寝付きや眠りの深さに影響を与える。高温、低温のいずれの環境でも深い眠りが減り、眠りの質が悪化すると示します。
実際の生活環境では、寝室の中で寝具・寝衣を用いて就寝するため、許容室温範囲は13~29℃と、より低温側に広く、その中でも夏では高め、冬では低めにとなるとしています。
冬は暖房で部屋を暖めたりしたり、寝具で保温することもできるため睡眠のための寒さ対策はさほど難しくありません。実際に寝具で適切に保温すれば室温が3℃になっても睡眠に及ぼさないとする研究報告もあります。
しかしながら、日本では室内の寒さへの対処不足が問題で、夜間に温まった寝床から出て、寝室、廊下、トイレなどの冷え切った空間に急にさらされると、温度差で心血管系の事故のリスクが高まること(ヒートショック)が指摘されています。高齢者のいる家庭などは特に寝室からトイレまでの経路の温度差を少なくする工夫も必要です。
一方、夏の暑さ対策は冬ほど容易ではありません。
単に室温が高いだけでなく、壁や床、家具、寝具などが熱をため込でいるため、就寝時にエアコンをつけても室温がすぐには下がりません。
そうした場合に何よりも得策なのが、日中の寝室への熱のため込みを減らす工夫。カーテンを閉めたり、窓際にグリーンを置いたりなどして日当たりを防ぐだけでも違ってきます。
窓の外側にすだれを吊るなどして、日光を防ぐことができればもっと有効です。どうしても寝苦しい場合は夏だけ眠る場所を変えてみるのも良いかもしれません。
また、エアコンを用いて暮らす方も多いと思いますが、エアコンと寝具(ベッド)の位置関係には注意を払いたいところです。エアコンから吹き出す風が顔や体に直接向かうと体が冷えすぎたり、乾燥しすぎたりして体調を崩す恐れがあるからです。
○ 音と光
第6条では、夜間の音は45~55デシベルあたりで不眠の原因になり夜間の覚醒が進み、一方、暗く無音の条件でも覚醒度が高まると示します。
特に突発的な大きな音は寝付きを悪くし、睡眠途中の目覚めの原因になります。音が気になる場合は、二重サッシや厚手のカーテンなどで防音すると良いでしょう。
光に関しては明るいと覚醒作用があり、入眠前に普通の室内より明るい光の下で数十分過ごすだけでも寝付きが悪くなるとされます。夜間に明るい光を浴びると眠りを誘発するメラトニンの分泌が抑えられるからです。特に青白い光、白っぽい光は覚醒作用が強いため要注意です。
就寝前の長時間のパソコン作業は眠りを不安定にするので控えるべき。寝床に入る1時間ぐらい前から暖色系の照明で、やや照度を落としてくつろぐなどすると眠りやすくなるでしょう。
睡眠中は天井の照明を落とすのが基本です。ただし、真っ暗にすると不安を感じることがあるので、そういう場合は弱い照明を足元に配置して視界に光源が直接入らないように工夫をします。
また、起床後に太陽の光を浴びることで、体内時計のリズムがリセットされ、15~6 時間後に眠気が出現することが知られています。この時間帯に光を浴びないと、その夜に寝付くことのできる時刻が少しずつ遅れ、朝寝坊が進みやすいとされます。体内時計の同調には屋外の光を用いることが効果的ですので窓際の明るい場所で朝食をとれるようにするとよいでしょう。
寝具の重要な役割のひとつは温度、湿度等の寝室環境の変化に対応して、寝具と身体の間にできる空間の状態=寝床内気候 を安定的に保ち、心地よく眠る条件を整えることです。そのためには体温を寝床内にため込み、発汗による寝床内の湿度上昇を防ぐ機能が必要です。 冬は掛け布団よりも敷き布団からの放熱が大きいので敷き寝具にも保温性が高い素材を用いるのが快眠ポイントです。かといって電気毛布を朝までつけっぱなしにすると、寝床内の温度が上がりすぎて、深く眠れなくなる恐れがあります。万一、電気毛布を使うときは、眠る前に寝具を温めるにとどめ、就寝時にはオフにすることをお勧めします。 また、寝床内の湿度に関しては50±5%ぐらいが快適であることが知られています。寝床内の湿度が高すぎると背中が蒸れて、寝返りが多くなりすぎたり、不快感が増したりして安眠ができません。人間は一晩にコップ1杯程度の水分を放出すると言われており、特に夏は発汗量が増えて敷き布団と接する背中部分の湿度が80%以上に達することがあります。寝床内の高温多湿を防ぐために敷き寝具では背面の湿度上昇を抑える工夫が必要です。熱伝導に優れ、吸湿・放湿性が高い「麻」のパッドやシーツを使うと不要な寝返りが少なくなり、眠りやすくなります。
人が最初に作った建築物は眠るための場所でした。 つまり、住まいの原点はネグラ。健康的な暮らしのためには最も重要な空間です。 寝床環境
睡眠指針第6条では「寝床内で身体付近の温度が33℃であれば睡眠の質的低下は見られない」「同一の温度下では、高湿度になると覚醒が増加し、深睡眠が減少する」と示しています。
寝床内は寝具で寝室と遮断されたうえ、人体が発熱し、発汗するために寝室とは異なった気候条件になります。
これまでの多く研究により快眠が得やすい寝床内気候の条件は温度33±1℃であり、寝床内が暑すぎても寒すぎても体への負担が大きく、快適な睡眠ができないことが知られています。就寝時には躯体部の表面温度が34~36℃に収束しますが、快適でかつ良質な睡眠が得られるのは、皮膚表面から少しずつ温度が逃げ、且つ寒さを感じない状態なのです。
早期の竪穴式住居には炉がなく、屋外で調理をしていたのです。日中の大半は屋外で過ごし、眠るときに住居の中に入りました。
近年の住宅はキッチン、トイレ、風呂、ダイニング、居間、玄関、廊下など細分化していますが、そうした生活空間の大部分は後から付け加えていったものです。
今一度、ネグラを見直してはいかがでしょう。
「快眠のための寝具」
不眠の影響
睡眠には体と心の疲労を回復する働きがあり、睡眠不足や睡眠の質の悪化が健康上の問題や生活習慣病のリスクを高めるとされています。日本人の約6割が悪性新生物、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病で亡くなり、生活習慣病には食事、運動、飲酒、喫煙などと同様に睡眠が深く関係している。日常的に睡眠時間が短い人、研究によっては長い人でも死亡リスクが高まると示しています。
不眠がうつや不安と相関性があり、不眠がそれらのリスクを高める恐れがあることも明らかにされました。
高齢者で不眠症の一つとなる入眠困難がある場合、後に抑うつのリスクが高まり、睡眠不足は感情調節や遂行能力をつかさどる前頭前野や大脳辺縁系などの働きを弱めるそうです。
また、睡眠不足や睡眠障害による日中の眠気がヒューマンエラー基づく事故につながるとも示されました。
睡眠不足と睡眠の質の悪化がさまざまなリスクを生みます。
環境に合わせた寝具選びを
日本には四季があり、季節によって温度、湿度等の寝室環境が大きく変動します。また、日本列島は南北に長く、同じ季節でも地域よって気象条件が異なります。
さらに住宅の構造に差があったり、布団派、ベッド派によって使用する寝具の種類が違ったりします。年間を通して快適で良質な睡眠を得るにはそれぞれのケースに応じた適切な寝具の選定が欠かせません。
寝具の機能に大きく影響するのは詰め物ですが、冬用掛布団の素材としては今のところ、羽毛が最適と考えられます。ただ、羽毛にも善し悪しがあり、また、鳥種、ダウン率、かさ高性、産地が必ずしも快適性を示すものではありませんので、購入時にはメーカーの品質管理体制などのチェックが必要です。
参考:
選び抜いた自然素材(株式会社イワタホームページ)
お客様の眠りを第一に考え、良質な睡眠から始まる新しいライフスタイルを提案いたします。
詳細はこちら。寝具御誂専門店IWATA
公開日:2015年10月11日