vol.012CADと併用して実施設計図を作成
vol.012 小見山 健次 氏
エムロード環境造形研究所 建築家
群馬県赤城高原
最も人の手に近いプランニングツール
設計事務所での10数年の修行の後に独立して、はや20数年。本拠地は故郷群馬の赤城高原です。
田舎住まいゆえに、一木一草の変化に気配りできる仕事をしたいと、独りでスタートした事務所ですが、最近は住宅に限らず店舗や公共施設、医療、福祉施設など、多岐に渡る設計業務を手掛ける機会が多くなり、時折り実施される公開コンペにも積極的に参加しています。10年ほど前からは手足となってくれるスタッフたちも6名に増えました。
ただ、人の数は増えても依頼者が私のデザインを期待してくれている以上、私が全てのデザインを計画するというスタンスは未だに変わらず「アトリエ事務所」を標榜し続けている次第。かくして基本計画の企画立案までの過程は全て私の業務。実施設計が始まる段階までは相変わらずただただ孤軍奮闘の日々です。
導入効果Conversion
- 企画に集中できる
- 質の高い建築パースが簡単に
- 面倒なことを覚えなくても感覚的に扱える
活用インタビュー
建築は「トレぺと模型で考える」
私の父は神社仏閣を造る宮大工でしたので建築への憧れは父の姿からでした。早く建築を学びたくて入った工業高校でしたが、もの足りずに結局大学まで…。
長く建築を学んだおかげで学生時代からエスキースと模型で考える習慣が身についていました。
プランが構想できたら、次は段ボールや白いスチレンボードを切ったり貼ったりの作業で建築をカタチにするのが当たり前だったのですが、独りで始めてみるとやることは全て自分。思うようには時間が取れません。
なんとかスピーディーかつ効率的に図面化、立体化する方法はないものかと、独立と同時に専用CADソフトを導入。CADソフトを駆使して、平面図から完成予想図まで、さらには実施設計図としての矩形図や立面図、展開図、建具表に至るまでを一人でこなしていた時期もありました。
しかし、プラン自体がオリジナルでは量産化、規格化、効率化への道は遠のくばかり。結局のところ専用CADだけに頼るのは無理と悟り、実施設計図はAutoCADでスタッフたちに描いてもらうことで割り切って、私はマイホームデザイナーPROで企画に集中する、というスタイルが一番相応しいと理解しました。
「手」のようにソフトを動かす
パースを描くためのソフトは多々ありますが、私にとって3DマイホームデザイナーPROを使うことはパースが一番の目的ではありません。
平面計画時の試行錯誤、つまりは『白い紙に鉛筆で描いては消す』を繰り返す時のもやもやとした作業をパソコン上で出来ないものか、ということが主たる目的でした。
なのでそのためのツールは、面倒なことを覚えなくても感覚的に扱えることが理想でした。
マイホームデザイナーはPRO3の時から利用していますが、操作性はほぼ変わらずに現在も進化を続けています。
図面化に関しては、マイホームデザイナーで作成した平面図をDXFファイル変換してAutoCAD(またはJW-CADなど)上で加工することで実施設計図としてすぐに利用できますし、一方で平面図の作成ができれば一気に立体化までが完成します。しかもインターネット回線を利用したOptimageでレンダリングすれば驚くほど精緻なテクスチャと陰影とがついた完成予想図が数十分で仕上がってしまいます。私のアバウトな操作でも依頼者を十分満足させる質の高い建築パースが簡単にできてしまうのです。
これは私にとってはいわば副産物でしたが、計画図と一緒にリアルな3Dパースを提示した時の効果、説得力には絶大なものがあります。多角的なアングルで見た数枚のパースを提示することは白い模型を提示する以上に相手を建築の魅力に引き込んでくれるのです。
実例
● RES
すでに実施設計が終了し、工事が始まろうとしている商業建築。既存施設をリノベーションして増築部分と組み合わせることで新たな現代建築として蘇らせようという構想で考えられたデザインです。
カーテンウォールで出来た大胆な南面ファサードと、低く伸びたRCの壁とで、鉄とガラスで構成された現代建築のシャープなモダニズムを表現しています。
でもパースの作り方は至って簡単。ガラスの色を少し変えた4連のアルミ製引違窓のタテヨコ比サイズを変えて平面図上に並べただけ。壁の繋がりと独立性とを意識しながら壁のメリハリを付けるべく壁に隙間をあけていく…といった操作だけで出来てしまう。いや、Optimageが勝手に作ってくれると言っても過言ではありません。
● Mこども園計画
群馬県北部に計画されたこども園の鳥瞰図です。
単純には片流れ屋根の木造平屋建て保育室が園庭を囲むようにぐるりと円形に展開しています。
正しく作るには屋根の連続性を表現するためにも計算された正確な屋根高さと勾配とが必要になりますが、あくまでもイメージ図ですから個々の屋根を手操作で微妙に変化させながら繋ぐことで、本来ならば3次元的な多少ややこしいデータ入力操作が必要なところを感覚的な手操作でごまかしています。人の手のように自在に操作できること自体がマイホームデザイナーPROの特徴でもあるのです。